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考!サンゲツ(DNP社製)EBクロスについて色々考えてみた2

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⓪内容

今回の内容は、EBクロスの不良につての考察で前回に続き2回目になります。

前回の記事はこちら

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今回は理系的な観点からもう少し踏み込んで、記事を書いてみたいと思います。なるべく平易に書くつもりですが、少しマニアックかもしれません。それに、私はクロスに関して十分な知識を持ち合わせているわけでもありませんし、私個人の考察なので見当違いや間違い箇所も多数あるかと思います。ただ、私の中で辻褄があうように、今まで培った知識や情報を元に考えた結果です。ですので、「こういう考え方もあるのだなぁ」という軽い気持ちで読んでいただければ幸いです。

①クロスの製造工程

まず、クロスってどうやって作られるのかを調べてみました。このように、他社の技術を調べるのに有効な手段の1つとして特許があります。特許を読み解くと、なんとなくその会社のやってることが見えてきます。さすがに私1人では馬力不足なので、「特許 大日本印刷 発泡 壁紙」とググって一番初めにヒットしたものを読んでみました。「特開2007-31893」という特許です。

特許を読むとき、全部読んでいては結構疲れます。今回はどうやってクロスを作るか知りたいわけですが、何をやっているかを知りたいときは「実施例」という箇所を読むと結構わかります。ここは、具体的に書くところなので、やったこと、やってることを書くことが多いのです。

以下がその実施例です。

実施例1

非発泡樹脂層Aを形成するために、EMAA(製品名「ニュクレルN1525」、MFR:25g/10分、メタクリル酸含有量:15重量%、三井・デュポンポリケミカル製)を100重量部用意した。
【0065】
非発泡樹脂層Bを形成するために、EVA(製品名「エバテートCV5053」、MFR:70g/10分、酢酸ビニル含有量:20重量%、住友化学製)を100重量部用意した。
【0066】
発泡剤含有樹脂層を形成するために、下記表1に記載の成分を含む組成物を用意した。
【0067】
【表1】

【0068】
上記樹脂及び樹脂含有組成物を溶融し、3種3層マルチマニホールドTダイ押出し機を用いて、厚み110μmの紙質基材(坪量70g)上に3層同時押出し積層し、非発泡樹脂層B/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層Aの順に積層した。各層の厚みは、前記の順に10μm/100μm/15μmとした。なお、この3層同時押出し積層におけるTダイ押出し機において、上記樹脂層Bを形成するためのEVAの入ったシリンダー、発泡剤含有樹脂層を形成するための表1の各成分の入ったシリンダー、及び上記樹脂層Aを形成するためのEMAAの入ったシリンダーの温度は、それぞれ100℃、120℃、160℃とした。また、ダイス温度は、すべて120℃とした。
【0069】
その後、上記樹脂層Aの上から電子線(175kV、5Mrad)を照射して、EVA樹脂を架橋させた。そして、非発泡樹脂層Aの表面にコロナ放電処理を行った。
【0070】
次いで、グラビア印刷により、非発泡樹脂層Aの表面にEVA系水性エマルションを2g/m2塗布することによりプライマー処理を行った。さらに、その上に水性インキ(製品名「ハイドリック」大日精化工業製)を用いて布目模様(絵柄印刷層)を印刷した。
【0071】
そして、当該積層体をギアオーブン中、220℃で30秒間加熱した。これにより、発泡剤が分解し、発泡剤含有樹脂層を発泡樹脂層とした。発泡倍率は5倍であり、発泡樹脂層の厚みは500μmであった。
【0072】
さらに、発泡体のおもて側にエンボス加工を施して、布目模様パターンを賦型した。
以上の過程を経て、発泡壁紙を作製した。

特開2007-31893より引用

いかがでしょう。固有名詞も多々でていて、かなり具体的です。私は化学に詳しくないので、材料のことはひとまず置いておきますが、製造工程を簡単にまとめると以下のような感じです。

まず最初は、紙質基材の上に3層コーティングすると書いてあります。
層構造はこんな感じになります。

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ちなみに、製造工程のイメージはこんな感じです。

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この絵は「壁紙工業会」さんのホームページを参考にしました。特許では一度に3層コーティングしています。

次がEBクロスの特徴である電子線照射とコロナ処理ですね。電子線照射の条件は175kV(キロボルト)、5Mrad(メガラド)です。Vはなじみがありますね。家庭用電源は100Vなのでその1750倍です。一方radという単位にあまりなじみがありません。1kgあたり1/100ジュールのエネルギーの吸収があるときの線量らしいです。5Mradはつまり1kgあたり500kJのエネルギーを与えるということです。やっぱりピンとこないので、水(比熱:4.217J/g℃)で考えると、1Kg(1リットル)を0℃⇒118℃(実際には118℃になることがありませんが)に上げるくらいのエネルギーです。結構すごいエネルギーですね。

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サンゲツ「EBクロス 2016-2018」カタログより引用

その次は、プライマー処理⇒水性インキで模様印刷です。ここで、クロスに花柄だったり、ドット柄だったり、格子柄だったりを書いてきます。

そして問題になっている加熱工程です。220度で30秒加熱し、発泡層を発泡させて厚みを100um⇒500umにしたと書いてあります。こんな感じでしょうか。

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最後にエンボス加工です。織目調や石目調など、表面に凸凹を付けていく処理ですね。
これでクロスの完成です。

②加熱工程

問題と言われている加熱工程です。過加熱による過発泡の状態を考えてみました。

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こんな感じでしょうか。見た目に異なる「1.表面に穴が開く」や「3.より厚くなる」はおそらく簡単に検知できるはずですし、「2.カチカチ、ボロボロになる」も、巻き取っだ段階でボロボロになるので検知できそうです。どれも何かしらの検査で簡単に不良を検知できるのではないかと思います。それに「装置稼働直後で熱が安定しない状態」って、例えばオーバーシュートやハンチングといった期間だと前回紹介しました。

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こんな僅かな間なことで、今回の不良を大量に発生させるのはやはり矛盾があります。それに、発泡剤を使ったクロスって「SPクロス」「FINEクロス」「Reserveクロス」などにもあります。とすると、他のクロスでも起こり得た問題なのに、「EBクロス」でしか起こっていないのは不思議です。

もし仮に、EBクロスの発泡剤だけ熱のバラつきに弱い材料を使っていたのなら、熱には一層注意を払うはずです。加えて、熱って比較的制御しやすいパラメーターです。さらに言えば、印刷大手の会社なので、紙に熱をかけるノウハウや技術はかなり優れているはずです。今回の熱だと言っている原因、私は一般消費者向けにわかりやすく説明するためのものではないかと想像しています。

③電子線照射工程

私が本当の原因だと想定しているはこっちです。なぜなら、①製造工程の過程でも述べましたが、電子線のエネルギーって結構すごいエネルギーからです。

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サンゲツ「EBクロス 2016-2018」カタログより引用

「電子線(EB)はUVの約1000倍のエネルギーを持ち」と書いてありますね。1000倍です。1000倍!って結構すごいです。1000倍のエネルギー差は、重さで言うと1kgと1000kg、高さで言うと1mと1000m、速さで言うと時速1kmと時速141km(エネルギーは速さの2乗に比例)です。例えば、時速1kmで壁に当たっても、たいして痛くもありませんが、時速141kmで壁に激突したらおそらく死んでしまいます。1000倍のエネルギー差ってすごい差があることを理解いただけたでしょうか。

それに今回問題になったEBクロス、日光に当たる部屋で早く劣化しています。つまりUV程度のエネルギーでも十分に劣化すると言っています。それが、UVの1000倍のエネルギーで照射されているのです。実際のエネルギーを計算してみます。

  UVのエネルギー≒2E-18(J)

  電子線のエネルギー≒2E-15(J) (UVの1000倍)

     UVのエネルギーはE=hc/λで計算
     h:プランク定数 c:光速 λ:UVの波長100nmとした。

一方、熱のエネルギーを計算すると

  熱のエネルギー:1E-20~1E-19(J)のオーダー

     熱のエネルギーはEはkTに比例
    ただし、比例係数は格子振動の次元によって変わるのでざっくり計算です。
     k:ボルツマン定数 T:加熱温度の220℃(220+273 K)

さて、熱のエネルギーがかわいく見えます。電子線のエネルギーの10000分の1以下程度しかありません。そこで熱が数℃バラついたところで、たいした影響はないのではないかと思われます。それに電子線の文献でこんなのを見つけました。第43回UV/EB研究会という研究会で電子線照射に関する発表があったようです。それを広聴した方が概略をまとめたものです。

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http://onsa.g.dgdg.jp/u43.htm より引用

 

赤線箇所には「 100um以下の薄膜を処理するのに、100keV以上の電子線を照射すると薄膜の後ろにある基材まで電子線が浸透し、発熱、着色、劣化、ゆがみなどの悪影響を及ぼす」と書いてあります。つまり、電子線を当てると、最表層(非発泡層A)を突き抜けて発泡層まで電子線が透過してしまうということです。当たり前ですが、最表層15umの暑さを十分架橋するには、15um以上の深さに十分電子線を届けなければいけません。ですが、電子線の注入深さは15umでピタっと止まるわけではありません。引用文のグラフは横軸に水に対する注入深さを表示していますが、ある深さでピタっと止まっているものはありません。だとすると、電子線で発泡層の表面が劣化してしまったと想像できます。そしてそれに発泡処理を加えます。こんな感じでしょうか。発泡層の濃い茶色で示した部分が電子線が当たって劣化した部分です。

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このように発泡層の表面側がうっすらカピカピになっていたのではないでしょうか。そしてこれにエンボス加工を加えます。

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なんとな~く〇:赤丸で示したところがパキッと割れそうじゃありませんか?十分な柔軟性があれば追従しますが、発泡層の表面側(茶色の部分)はカピカピで柔軟性がありません。もちろん最表層(非発泡層A)は電子線で特性が安定するような強い層です。この層が傷やUVからのダメージを守ってくれるのでしょう。しかし、発泡層(オレンジ)は今回のケースからもわかるようにUV等でポロポロしてしまう層です。するとひび割れた箇所からUVなんかが当たるとどんどん劣化が進んで、想定していたよりも早く劣化してしまいそうです。

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今はエンボス加工を例に上げましたが、巻き取るときや貼るときにも応力がかかります。また、貼った後も温度変化で応力はかかってきます。すると、クロス使用時には、表面が亀裂だらけになっていたのではないかと考えています。

ただ、出荷時は発泡層の最表面の一部しか劣化していないし、亀裂もあまり目立つものではないので、見た目、厚さ、硬さなどからは検知が難しいように思えます。なので、検査をすり抜けて大量に出荷されてしまったのではないでしょうか。

今回、新しいシリーズ「EBクロス 2016-2018」では、「1.厚みを増した」「2.光安定剤を添加した」という2つの対策をしたと前回の記事にも書きました。もし、私が想定したようなことが起こっていた場合、「1.厚みを増した」だけではあまり効果的ではありません。一方「2.光安定剤を添加した」というのは劇的に効果がありそうです。加えて「1.の厚みを増す」ことで、劣化を十分遅らせることができそうです。また、光安定剤って、劣化をしないよう作用するものなので、電子線のダメージもある程度吸収してくれるのではないかと考えられます。このように、電子線の工程で不具合が生じていたのだとすると、技術的にも、EBクロスだけで不良品が発生していたことも納得ができます。

加えて、今回の不良、「EBクロス」だけではないのです。私の家では使用していませんでしたが、「EB鏡面化粧シート」というものでも発生しているとDNPの担当者さんから聞きました。「EBクロス」と「EB鏡面化粧シート」に共通していて、「EBクロス」と他の不良が発生していないクロスで共通していないものって、もう1つしかありませんね。おそらく、電子線(EB)の工程が不良を発生させていた原因だと私は考えています。

④まとめ&最後に

いかがだったでしょうか。EBクロスの不良について色々考察してきました。私は、今回の不良原因は透過した電子線で発泡層表面を劣化させていたと考えました。こう考えると色々辻褄が合います。ただDNPさんが肯定したわけではないので、間違っているかもしれません。「このような考えもあるのだなぁ」と軽い気持ちで受け取ってもらえるとありがたいです。それと、対策を十分行った「EBクロス 2016-2018」は大丈夫だと信じたいです。

 

でも、私は、貼り替えるクロスをEBクロスから選択してません。だって、電子線の透過を完全にシャットするのはおそらく不可能です。すると、発泡層の表面は少なからず劣化していると考えてたからです。それに、厳しい言い方ですが「EBクロス2016-2018」ってまだ発売されたばかりで実績がありません。大丈夫だと信じたいけど、信じる決心がつきませんでした。

ただ、クロスを変更する場合、「SPなら無料、グレードアップ品は差額支払い」また「SPはグレードダウンになるのでお勧めできない」と言われました。すると選択肢が1つしかなかったです。差額支払いでグレードアップ品から選ぶことにしました。なんとか年内に貼り替え予定なので、それまでに「あーでもない、こーでもない」とどの柄にするか楽しみながらを選んでいきたいと思っています。

 

今回も最後までお読みいただきありがたとうございました。

 

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